高田博行・小野寺典子・青木博史(編) 『歴史語用論の方法』(Methods in Historical Pragmatics)(ひつじ書房, 2018年)

第1部は「語用論的フィロロジー」、第2部は「通時的語用論1<形式ー機能の対応づけ>」、第3部は「通時的語用論2<機能ー形式の対応づけ>」となっていて、全体で14章から構成されています。

「牧師の話」における従属節の配置

本書の第5章を分担執筆しました。第1部(語用論的フィロロジー)の中の一章です。書誌情報は、以下のようになります。

家入葉子. 2018.「従属節の配置に見る読者との対話―『カンタベリ物語』の最終話「牧師の話」をめぐって」 高田博行・小野寺典子・青木博史(編) 『歴史語用論の方法』(Methods in Historical Pragmatics) pp. 95-112. 東京:ひつじ書房.

ジェフリー・チョーサーの『カンタベリ物語』の中の散文作品である「牧師の話」を題材に、if, though, when, because (by cause), tillで導かれた節が文中のどの位置に現れるかを、情報や認知的な観点から分析した論考です。

関連の論文

  • Iyeiri, Yoko. 2013. “The Positioning of Adverbial Clauses in the Paston Letters”, in Meaning in the History of English: Words and Texts in Context, ed. Andreas H. Jucker, Daniela Landert, Annina Seiler, & Nicole Studer-Joho, pp. 211-229. Amsterdam: John Benjamins. — やはり異なる副詞節と主節の位置関係を扱った論文ですが、分析対象となるテキストが異なります。時代もチョーサーよりは若干後になります。

歴史語用論について

近年、歴史語用論や歴史社会言語学という分野が急速に注目を集めるようになってきています。我が国では、日本語、英語、ドイツ語が連携する形で、この分野の出版が相次いでいます。その一つが、金水敏・高田博行・椎名美智(編)『歴史語用論の世界』(ひつじ書房、2014年)です。「はじめに」の部分を読むと、この分野が確立してきた経緯が解説されています。